組織における「人材」の問題は、放っておくと大きなトラブルにも。人材活用のコツとは?

せっかく採用しても、つぎつぎに辞めていく。社員が定着しない。チームメンバーの力を最大限に引き出して、組織を強くしたいのに、うまくいかない。組織をつくる立場、メンバーをマネージメントする立場の人であれば、1度はぶつかる壁なのではないでしょうか。
どうすれば組織の「人材」をうまく活用することができるのか。働いているメンバーがいきいきと力を出す環境をつくることができるのか。
根性論では人を動かすことはできない今の時代に、組織における人材活用のヒントをお伝えします。
1.評価基準のゆがみを小さくすること。頑張ったら報われる評価をめざして
どんどん人が辞めていってしまうという場合、その組織にいる価値を感じない人が多いということを意味しているとも言えますよね。もちろん、メンバーがどんどん辞めていってしまう背景は、それぞれの企業の事情を見ないと、適切なことはお伝えできません。
でも、わたしがこれまで関わってきた企業における組織での人材活用の問題は、いくつかの共通点があると感じるようになりました。
その1つが、評価基準です。これは、組織に属して働いている誰しもが、多かれ少なかれ気にしていることなのではないでしょうか。自分が頑張った分だけ、きちんと報酬がもらえる。会社員の場合、この評価基準に100%満足することはないかもしれません。でも、自分の頑張りがまったく反映されないという感覚を抱いている人が多いほど、その組織を去っていく人は多いと思います。
たとえば、わたしが身近で感じた事例は、同じ組織内でプロジェクトマネージャーとエンジニアの両方を経験したことがある同僚の一言でした。
「エンジニアになってから、評価ポイントを達成しやすくなった。プロジェクトマネージャーのときは、担当しているプロジェクト全体の進捗や状態だけが自分の評価だったので、自分の努力次第で評価をもらえるという感覚がなかった。だから、みんなプロジェクトマネージャーを辞めちゃうんだって気づいたよ」と。
これは、特定の企業内での話なので、すべての企業に当てはまる話ではありません。でも、ここから気づいたのは、特定の部署、ポジションの人が辞める割合が多いという場合、そのポジションの評価基準は、働いている人がめざしたいと思う基準なのか、不公平感が大きくなりすぎていないか、見直してみる価値があるのではないかと。
自分の成果をもっと評価されたい、報酬を得たいという場合には、会社員ではない形で仕事をする方がいいという話にもなると思います。ただ、組織をつくる人、メンバーをマネージメントする側にとって、優秀なメンバーが最大限力を発揮できる、発揮したいと思える環境づくりも大事ですよね。
2.1人を守るのか、チームを守るのか、事業を守るのか。自分で納得いく判断を
組織をつくる立場、マネージメントする立場の場合の人にとって、メンバー全員が100%満足する環境をつくることは難しいかもしれません。そして事業を維持、成長させながら、強いチームをつくり、メンバー1人ひとりが活躍できるようにする。そんなに、何もかもうまくいくなんて無理だ…。そう途方に暮れてしまうこともあると思います。
でも、チームのメンバーに何か問題が発生しているときは、「とりあえず様子見ていればいいや、大丈夫だろう」と判断を先延ばしにすると、あとで思いもよらない大きな問題に発展することもあります。1人の問題が、チーム全体に影響を及ぼしたり、ときには経営そのものへの打撃にもなりかねないんです。
たとえば、わたしが遭遇したことがあるのは、こんな事例でした。
中途採用で入社したとある男性。パフォーマンスがあまり発揮できず、それを同僚や上司は気づいている状態でした。時間が経てば経つほど、状況は悪化。お客さまからも苦情が何度もくるように。そして1年半ほどして、上司がようやく改善策に乗りだしました。でも、その男性は、自分の改善点を認めず、周囲や環境のせいにするばかり。しまいには、上司の高圧的な態度を人事へ訴えると。
こうなると、とき既に遅し。このような状態になったときに、その男性1人の問題だけでなく、一緒に仕事をしているチームメンバーのストレスや負荷が高まります。最悪の場合には、辞めてほしくないパフォーマンスの高い人が、辞めていきます。
あるいは、お客さまからの苦情を何度も受けるようであれば、会社への信頼も失いかねません。
こんな極端な例はなかなかないかもしれませんが、組織を構成するメンバーそれぞれをどう活用するのか、場合によっては厳しい対応をすることができるか、問題が大きくなる前にきちんと観察し、判断できるかがとっても大事何です。
こういった人材に関する問題は、「採用」「教育」「アサイン(配置)」などのさまざまな要素が組み合わさって起こります。
とにかく、わたしがいつも肝に命じているのは、いま目の前で起こっている問題を放置するとどんなリスクが考えられるのか、考えうる選択肢は何か。なるべくいろんな要素をかけあわせて、何を優先すべきか、最適な判断をするように努めることです。目の前の1人だけに対応すればいいのか、チーム全体を考えた対策が必要なのか、はたまた事業を守るための判断が必要なのか。
人材活用は、1人ひとりの問題に限らず、とても複雑に絡みあっていますよね。だからこそ、日頃から、メンバーの様子や問題の種に目を向けておくことをおすすめします。そして、自分で納得できる判断をできるようにすると、迷いが少なくなるのではないでしょうか。